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錆の魅力と付き合い方について
アイアン製品を作っていると良く聞かれるのが、「錆ますか?」という事。
鉄だから錆びるのは当たり前だけど、製品としてちゃんと使えるの?という疑問があるようです。
僕はこういう時には
「鉄製ですので使っているうちに錆は発生します。その発生をゆっくりにする為にコーティングをしていますが、錆の発生はゼロではありません。錆が少しづつ出てきて、風合いが増していくのも楽しんで頂ければと思います。」
とお答えしています。
以前も書きましたが、僕は鉄に錆が発生して、どんどん変化していくところも鉄製品の魅力だと思っています。
ただ何もしないで放っておくと、あっという間に真っ赤な錆に覆われてしまいます。
それでは実用品としては使い難くなります。
その為、サニーサイドスタジオではウレタン塗料という丈夫な塗装で表面保護しています。
透明なウレタン塗装は、鉄の風合いを損なうことなく表面を保護してくれます。
軒先で使うような置き型の看板や、室内で使う物であればこちらで十分だと思います。
屋外で常に雨ざらしになる場合や、出来るだけ錆させたくない場合には艶消しの黒色で塗装する方法もあります。
この場合、錆止め塗装と黒色のウレタン塗装で表面を二重に保護するので、
錆から本体を守る力はより強くなります。
このように使用用途や、要望を聞いてご提案させて頂くので、心配な点があればお気軽にご相談下さい。
※ちなみに塗装は吹き付けで行い、鉄の表面の風合いを出来るだけ無くさない滑らかな仕上げにしています。
個人的には鉄が錆びていく様子というのは、革製品が手に馴染むような、デニムの藍色が少しづつ褪せていくような。そんな魅力があると思っています。丈夫な素材なので長く使うことができ、風合いの変化を楽しんで頂きたいと思っています。
因みに鉄は自然界では「鉄鉱石」の状態で存在しています。それを高い熱でドロドロに溶かし、精製して鉄だけを取り出しています。
鉄は製品になってからも酸素と結びつき錆が発生します。空気中には酸素が漂っているので、放っておいても鉄と反応しますし、水がかかればなおさらです。
その酸素や水から鉄を遮断する為に、塗装を施すという訳です。
NHKの番組で「鉄はなぜ錆びるの?」という疑問に対して、「鉄は錆びたがっているから」と答えていたのが印象的でした。鉄は自然界での鉄鉱石(酸化鉄)の姿戻ろうとしているそうです。
人工的に精製された鉄ですが、元の状態に戻ろうとする姿からは素材としての生命力のようなものを感じます。
鉄という変化する素材を楽しんで頂き、そも魅力を少しでも引き出せるよう毎日ものづくりをしています。
トップの画像はウレタンクリア塗装をして2年間雨ざらしで、直射日光にさらされた工房の看板です。うっすら錆が浮いているのが分かるでしょうか?メンテナンス無しでこの程度の変化が起きますので、参考にして頂ければと思います。
看板で人の足を足を止めたい
街中にはたくさんの看板や標識、言葉があって、競い合うように派手で大きく、自己主張をしています。
人に伝える為のものなので、それはそれで仕方の無いことなのかもしれませんが、道を歩いていても必ず目に飛び込んできて、意識に働きかけてきます。
疲れている時や精神的に落ち込んでいる時には、街中の情報の多さに圧倒されてしまう事もあって意識への暴力がすごいと感じます。
見たくも無い物を見せられたり、知りたくもない情報を無理やり目の前に突きつけられるのはツライものです。
●美しい物があれば人は足を止めるものだと思う。
逆に、物でも風景でもつい足を止めて見入ってしまうことがあります。
雲の切れ間に沈む夕日、雨に濡れた紫陽花。綺麗な色の絵画。上質な革製の鞄。
僕は色んな物に足を止めてしまうので、怪しいと言われることもしばしばですが、人は無意識のうちに美しい物に惹かれるものかなと思います。
派手さや大きさは無理やりに感情をこじ開け飛び込んできますが、美しいものにはスッと心の中に入ってくるような切れ味があります。
●アイアン看板で人の足を止めたい。
最近、看板の依頼を頂く事が増えてきました。
アイアンで造る看板は派手さはありません。
人の目を惹くような大きな文字もありませんし、派手な色味もありません。
製作の際に心がけているのは、「造形として美しいかどうか」ということです。
先述のように、人は美しいと感じるものがあれば自然と足を止め、見入ってしまうものだと思います。
だから看板の大きさや派手さは必ずしも必要ではありません。
美しさで人の足を止め、情報を伝える。
人の感情にドカドカ入って行くのではなく、相手が自然にドアを開けてくれるというのが理想です。
●看板の役割
個人的に看板には2種類の役割があると考えています。
1つは存在を知ってもらう役割。
もう一つは入り口を美しく飾る役割です。
自身の存在を知ってもらうためには、街行く人に知って貰わないといけません。
でも看板は訪問者が最初に出会うお店の顔でもあります。看板一つでこれから訪問する場所の期待値が上がったり、ワクワクすることがあります。
だから美しく、存在感を放つ看板で人の足を止め、そして期待にワクワクさせたいと思っています。
そうすれば街の景観も壊さないし、お店の存在を知ってもらう事もできる。
それに街中に美しい物が増えれば、街や人がちょっと幸せになると思います。
街中を歩いているとそんな事をふと考えます。
理想ばかり先立ちますが、そんなものづくりをしたいと考えています。
溶接って危険じゃないの?と聞かれたので
「溶接やりませんか?」というと「危険じゃないの?」と返されます。
溶接は危険な作業です。はい。それは間違いありません。
ただきちんと作業着や、革手袋などの保護具を着用して機械の扱い
をキチンと教わり、手順を徹底して守っていれば、そこまで怖がるものでもありません。
例えば、どんなスポーツでも自分の実力以上の事をしようとすればケガの原因になります。オートバイに乗るときには免許を取り、ヘルメットを被り交通ルールを守らなければ、最悪死んでしまう事もあります。
登山道に入る前に装備を整え、道を調べて計画を立てなければ遭難してしまいます。
それと同じでルールや基本作業をキチンと守り、無理をしない。
という事が大切なんです。
溶接のように特殊であまり一般に知られていない技術や物事であればあるほど、危険だというイメージは大きくなりがちですが、実はそうでもありません。
溶接が危険だと言われるのには鉄がドロドロに溶けたり、火花が飛ぶという非日常だからでしょうか。(それが面白いのですが…。)それに薄暗い鉄工所のイメージから来る取っ付きにくさからでしょうか。
溶接をやってみたいけど、2の足を踏んでいる方に伝えたい事は、「キチンとルールを守り、熟練者の指導を受ければ初心者の方でも楽しめる」「ルールや基本の手順を守らなければどんなものでも危険だ」ということです。
つまりは溶接=危険というイメージに囚われて欲しくないのです。
少し前までは若い女性が丸ノコやインパクトドライバーを使う事は珍しかったし、ホームセンターなんておじさんが行く場所でした。それが今は大きく様変わりしています。DIY=日曜大工というイメージは随分と変わったなと思います。
溶接が新しいDIYとして、認知される為には、正しい情報や、教える人がもっと必要で、それらが充実してくれば取り組む人も増えます。そうすると企業が参入してきてもっとお洒落で使いやすい保護具も開発されるかもしれません。
そうなれば溶接の業界ももっと良くなると思いますし、仕事として溶接に取り組む人が増えるかもしれません。
溶接は良く知られていないからなんとなく怖そう。と思われています。また鉄工所の薄暗いイメージでとても危険な作業だというイメージが強いと思います。サニーサイドスタジオでは溶接をもっと気軽に楽しんで頂けるよう、イメージから変えていきたいと思っています。
まずは一度ワークショップで溶接の世界を体験してみて下さい。
新しいDIY 「溶接」を楽しんで下さい!
オリジナルの看板製作承ります
サニーサイドスタジオではアイアン製の看板を製作しています。
軽量な折り畳み式から重量のある据え置き式まで、既存のデザインをご希望のサイズに変更して製作させて頂きます。
また1からデザインを起こすオーダーメイドも可能です。イメージ図やスケッチ等からデザインを起こす事も可能です。お気軽にご相談下さい。
ロゴマークや定休日の情報をカッティングシートで施工する事も可能です。
データが無い方は画像等からデータ起こしも可能です。
お気軽にご相談下さい。
お客様に足を止めて頂き入店して頂けるキッカケになれるよう、1つ1つ大切に製作しています。
お店の雰囲気に合わせたオリジナルの看板をお考えの方はお気軽にご相談下さい。
アイアンの黒皮
アイアンの魅力の一つに「黒皮」があります。
この黒皮は後から加工して付けている訳ではなく、アイアンを精製する際に自然に発生する、「錆」の一種です。
「錆」と聞くとあの赤茶色の「赤錆」をイメージされるかもしれませんが、黒皮とは全く別の物です。
赤錆は鉄の内部まで侵食し、手で触ると赤い色が付いてしまいます。
対して黒皮は鉄の表面だけに発生し、内部までは侵食しません。
黒皮がついている箇所には赤錆が発生し難く、鉄本体を守る役割もあるんです。
サニーサイドスタジオの製品はクリアラッカーで錆び止めをしているので、サビの発生はとてもゆっくりとしたものになります。
量産品のようにペンキで塗装をしていないので鉄本来の黒皮や、溶接跡、加工の際に付く削り跡などをそのまま見る事が出来、それらがデザインの一部となっています。
「鉄」という素材が持つ味わいや経年変化を楽しんで頂けると思います。