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ステンレスの黒染めという技法
ステンレスは名前の通り錆に強い素材です。
そのため水回りのシンクや、調理用具に用いられますが屋外用看板にもぴったりの素材です。
アイアンの赤錆が出て経年変化していく様は趣があって素敵なのですが、
雨晒しになる場所に設置する場合や、周りをサビで汚したくない場合はこの素材をお勧めしています。
ただステンレスの場合は見た目が綺麗すぎて風合いが良くありません。
表面を塗装すれば見た目の問題はクリアしますが、素材感をもっと引き出すために素材の表面を薬品で化学反応させ、黒く着色する「黒染め」を施しています。
黒染めは塗装よりも塗膜が薄く素材感があるのでアイアンのような素朴さがあります。
少し専門的な話になりますがステンレスの表面には不動態皮膜と呼ばれる膜があります。これはステンレスの成分である「クロム」が大気中の酸素に酸化されることにより生成されます。素材自体の成分からできているので剥げてもまた再生されるという特徴があります。
この膜により表面が保護されることでサビから身を守っているのです。
ただこの強い膜があることにより薬品も弾いてしまうので、普通に黒染め用の薬品をつけても黒くなりません。
その為表面処理により膜を剥がしたり、温度を変えることで反応を良くしたりと色々と工夫をしないといけません。
この膜を一旦除去するという工程がとても大変で、たくさん試行錯誤して方法を探りました。
※まだまだ色々な方法を試していますが、少しづつ安定した色を出す事ができるようになってきました。
塗装は均一的な美しさがあり、黒染めには素材が持つ魅力を引き出す良さがあります。
どちらが優れているというわけではないので、ステンレスの素材感と、素材の持つ「錆びない」という利点を活かした製品づくりをしていきたいと思います。